「シャツのデザインで少し個性を出してみよう」、「首回りがきついから、少し大きめのサイズで楽をしよう」。
昨今スーツショップに多種多様なワイシャツが販売されている状況や、近年の酷暑などを鑑みると個性的なシャツや大き目のシャツを選択されることも致し方ないと思う。
反面、ワイシャツを選ぶ際にそういった主観的な考えを持ち込んでいるとしたら、威厳貫禄に重きを置く紳装堂の外見戦略は根底から崩壊してしまうとも思っている。
なぜなら、ワイシャツにはすべてのリーダーが覚えておかなければならない絶対的な大前提があるからだ。
それは「ワイシャツとは、もともとの由来はジャケットの中に着用する『下着(アンダーウェア)』である」ということ。
そして白無地のレギュラーカラーシャツ(襟型)が、いつの時代も絶対的なフォーマルでクラシックなワイシャツ選びにおいて、基本中の基本という事を忘れてはならない。
ビジネスマンにおけるワイシャツの必要枚数と使い分けの規律について詳しく解説した記事はコチラから。
この歴史的事実を忘れ、下着由来のワイシャツの襟裏に奇妙な柄を忍ばせたり、カラーボタンなどに走ったりして、自らリーダーとしての威厳を落としてはならない。
ビジネスやフォーマルという場において、求められているのはクラシックでシンプルなワイシャツなのだ。
そのクリーンな土台を完璧に整えた上で、我々が執着すべきは色柄よりも「首回りや袖丈の細かな調整」などなのだ。
この記事では、世間の間違ったトレンドを一喝し、クラシックな襟型や生地の格(ルール)を徹底解説する。
さらに、私が数々の実戦から導き出した「通常より2cm長めに仕立てる袖丈の黄金比」や、後ろ姿の風格を決める「襟の1cmの統治」、前立てやポケットの有無、そして袖口に知性を宿す「カフスボタンの戦略」に至るまで、Vゾーンを完璧な勝利へと導くための「ワイシャツの選び方」を余すことなく書き尽くしていく。
目次

私は過去、ビジネスの場で「おしゃれ」を目指すから失敗するという記事において、ビジネスやフォーマルな場では主観的なセンスを捨て、客観的な「正解」を目指す重要性を強く説いた。
その規律が如実に、そして冷徹に試されるのがVゾーンの中心に位置する「ワイシャツ」の選択である。
まず、すべてのリーダーが絶対に覚えておくべき大前提がある。
それは「ワイシャツとは、もともとジャケットの中に着用する『下着(アンダーウェア)』が由来である」ということ。
昨今、ビジネスの現場を見渡すと、襟の裏側に柄が入っていたり、ボタンホールに色糸が使われていたり、あるいはわけのわからない多色使いのボタンが並んでいたりと、推奨できるとはいいがたい状況が散見される。
私が提唱する「クラシックで伝統的な装い」において、これらの装飾はすべて、威厳を自ら失墜させる致命的なアンマッチなのだ。
ワイシャツに過剰な装飾など不要なのである。
純白な清潔感のある白を維持するための、シミ抜き方法を解説した記事はコチラから。
■白が大前提であるが応用もあり

まずワイシャツの色の選択において、「白」が絶対であり、大前提であることをここに再度、強調しておきたい。
しかし、シーンによってはストイック過ぎる印象を持たれたり、少し堅苦しさを敢えて控えたい場面も時にはあるだろう。
そんな時は、白という正解を理解した上でスーツの色を拾ったり、あるいは季節の色を取り入れるという意図のもと、ごくごく薄いブルーや淡いピンクなどを取り入れるのが良い。
どんな時でも迫力を持つ絵画が下地を強固に塗るように、首元には徹底してクリーンでごちゃごちゃしない「色」を据える。
その引き算の潔さこそが、対峙する相手に無言の誠実さと、底知れない貫禄を感じさせる武器になるのだ。
またここで忘れてはならないのが、いくらいいワイシャツを選べたとしても肌着が透けては本末転倒だということ。
肌着の重要性と選び方について詳しく解説した記事はコチラから。

次にワイシャツの「格」を決定づけるのは、襟(カラー)の形と、生地(織り目)である。
ここを感覚で選んでいるようでは、威厳、貫禄ある装いの再現性を強硬にすることが難しい。
■襟型の規律|選ぶべき正解
結論、私の独自の威厳スタイルにおいておすすめする襟型は、クラシックな伝統に裏打ちされた以下の2タイプである。
・レギュラータイプ: 襟が長めで、クラシックかつフォーマルなスーツに最もよく似合う伝統の型であり、威厳スタイルでは基本的にこの型を使用する。
・セミワイド: 幅広ネクタイを締めた際、襟の開きと結び目(ノット)のバランスが調和する現代の万能型。
まず前提として私の威厳スタイルでは、ブリティッシュなダブルスーツに幅広のピークドラペルもしくは、シングルスーツと幅広ピークドラペルを組み合わせることを推奨しているのだが、そこに合わせるネクタイは幅広でないとラペル幅とネクタイ幅にアンバランスが生じるのだ。
その為ネクタイは基本幅広のものを取り入れる。
しかし、幅が広いネクタイを結ぶとノット(結び目)が大きくなりやすく、その大き目のノットを無駄なく隅から隅まで見せてくれるのは、一般的に襟が広く開いているワイドカラーシャツだとも言われている。
だが、私の中ではワイドカラーシャツはどこか胸元が開いていてイタリアンなイケオジ風な印象を受けるのだ。
あえて言葉を選ばずに言うと若干チャラく見える。
私のスタイルはチャラさとは無縁な徹底的な威厳と貫禄のスタイルであるため、幅広のネクタイにこそ基本中の基本であり、最もフォーマルなレギュラータイプの襟型を選択するのだ。
■タブカラーシャツやピンホールシャツの存在
そして補足だが、ここまで話が盛り上がるとタブカラーシャツやピンホールシャツの存在を避けては通れない方も多いだろう。
私は最近まで襟元をキュッとネクタイ裏で絞り、動きを見せるタブカラーシャツや、襟の先のピンホールにカラーピンを通して、これもまたネクタイに立体感を与えるピンホールシャツは非常にフォーマルなシャツの一種だと思っていた。
しかし、勉強を重ねてみると意外にもカラー(襟)に動きを出すこの2種類のシャツはスポーティな部類に入るのだという事実を理解した。
このような知識も皆様のコーディネートの一助となれば幸いである。
■近年の無秩序な風潮
そして昨今のメディアやテレビのコメンテーターなどを見ていると、かっちりとしたタイドアップスーツスタイルに「ボタンダウンシャツ」を合わせ、ネクタイを締めている姿が散見されるが、私はあえて釘を刺す。
ボタンダウンシャツは、もともと英国のポロ競技のユニフォームが由来であり、本質はカジュアルでスポーティーなシャツなのだ。
したがって、命運を懸けた商談やタイドアップする厳格な装いにおいては、完全にチグハグであり避けるべきシャツである。
ボタンダウンシャツをスーツスタイルに取り入れる名門ブランドは存在するには存在するのだが、装いのルールや発祥の起源を理解せずに装いをなんとなく取り入れていると、大きな機会損失にもつながりかねないのだ。
自分が着るものについては触れる程度でも構わないので、少しは学んでおくことを推奨する。


生地の織り方もまた、格を左右する重要な要素である。
最もフォーマルなものから順に、以下の特徴を理解して使い分けなければならない。
・ブロード(ポプリン):ドレスシャツの代表格であり、表面に美しい光沢があるのが特徴である。またフォーマル色も強く、勝負の日の白シャツはブロードで間違いないだろう。
・ツイル(綾織り): 斜めの畝(うね:平行な凸凹な線)の織りが特徴で、程よい厚みと上品なツヤがあり、淡いブルーやピンクなどの色を乗せるのに最適。シワにも強い。
・オックスフォード: 糸が太く、織り目が粗いのでカジュアル。ボタンダウンシャツの定番生地であり、休日やノーネクタイなど極めてカジュアルなシーンに取り入れるべき生地であり、勝負のVゾーンにはアンマッチである。
そして、ワイシャツのイメージを大きく左右するもう一つの大事な要素として、前立てとポケットの有無が挙げあれる。
ドレスシャツの「胸ポケットの有無と前立ての仕様」は、そのシャツが持つ格と印象を大きく変化させる決定的な分岐点なのだ。
まずはポケットについて解説していこう。
■日本のビジネスに根差した胸ポケット「あり」

昨今の日本のビジネスシーンでは、ペンや社員証などを入れる利便性から「ポケットあり」が主流として定着しているように思える。
毎日の事務仕事や実用性を重視する場面においてこれを選択することはマナー違反にはならないが、スマートフォンやペンをパンパンに詰め込むと見栄えを著しく損なうため、ポケットに入れるものは最小限に留めるのがスーツスタイルの身だしなみにおける絶対的な条件であると言えるだろう。
■クラシックでフォーマルな胸ポケット「なし」

ただし、伝統的なドレスシャツにはもともと胸ポケットがないものが多く、重要な商談やフォーマルな場において、よりフォーマルで威厳ある印象を与えたい場合には、ポケットなしのワイシャツ一択である。
胸元がすっきりすることで、スーツやジャケットを着用した際にもシルエットが崩れず、美しい立体感が保たれるのだ。
また、先ほどもお伝えした通り日本の既製品市場ではポケットありが主流だからこそ、あえて「ポケットなし」を選択することで、ワンランク上の装いを演出することが可能になるだろう。
次に解説するのは前立ての有無。
■前立ての有無
ビジネスシーンで「威厳がある」という印象を重視する紳装堂の威厳スタイルでは、イギリス式の「前立てあり(表前立て)」をあえて選択することが非常に有効な戦略だと考えている。

シャツの「前立て」とは、簡単に説明するとボタンが並ぶ中央部分の仕様のこと。
主にボタンの周りに縦の「帯」が表に見える前立てありの表前立てと、帯がなく生地が内側に折り返されてすっきりしている前立てなしの裏前立ての2種類がある
昨今の日本のメンズファッション市場では、「前立てなし(裏前立て)」の方がドレッシーでエレガントであり、「前立てあり」はどこかカジュアルでスポーティーと解説されることが増えているように思える。
しかし、これは主にイタリアやフランスのスタイルを中心とした見方であり、スーツ発祥のブリティッシュスタイルでは前立てを取り入れているのだ。
フロントに直線の立体感を出すことで、胸元に重厚感や男性的で堂々とした「威厳」が生まれやすいのだろう。
これはどちらのデザインもドレスシャツとしての格は高く、マナー違反にはならない。
ご自身を「威厳ある大人の風格や信頼感」として見せたい場合はイギリス式の前立てありを選び、「スマートで色気あるお洒落さ」を見せたい場合は前立てなしを選ぶのが良いだろう。
その場その場の装いの方向性に合わせてフロントのデザインを使い分けることができればまさに装いの上級者で間違いないだろう。

最後に、どれほど色や襟型をクラシックに整えてもサイズ感に「弛み」があれば、そのシャツはだらしなさを露呈してしまうのだ。
ワイシャツを選ぶ際に、リーダーが絶対に妥協してはならない一線が「首回り」と「袖丈」の2箇所である。
■首回りの規律|だらしなさを排す「指一本分」の正解
「首回りがきついのが嫌だから」という安易な理由で、大きめのサイズを選ぶ方がいらっしゃるが、絶対にやめてほしい。
襟元がブカブカと浮いたシャツは、それだけでだらしなく見え、リーダーとしての締まりを完全に失わせる。
正解は、「一番上までボタンを閉めた際、指一本分ほどが滑り込むだけのゆとり」だ。
これ以上小さくては実用面で息苦しく、これ以上大きくては外見戦略上の美しさが崩壊する。
この絶妙なバランスこそが、Vゾーンを引き締める「正しさ」なのだ。
■ 袖丈の2cm補正|静と動を支配する「手の甲」の規律
また、首回りと同様に袖の長さはスーツスタイルの完成度とリーダーの清潔感を担保する極めて重要な要素である。
基本的な規律は、腕を下ろした直立状態で、ジャケットの袖口からワイシャツが1.5cmから2cm正しく覗くこと。
この僅かな白いラインがあるからこそ、手首まで続く綺麗な視線が生まれ、全体のシルエットが劇的に引き締まる。
しかし昨今の既製品のワイシャツは少々袖丈が短めに作られている傾向があるように感じる。
具体例を挙げるなら、私の場合いつも首回りは「43cm」ほどがジャストなのだが、既製品では通常、袖丈は「82〜83cm」ほどが一般的だ。
私はそこから「84cm~85㎝」へ、通常より2cmほどは少なくても長めに調整することを強くお勧めする。
可能であれば、これらを細かく指定できるオーダーシャツを選択するのが最善だが、地元のイオンブランドでも袖丈を選ぶことができる商品があるので、日常のガシガシ使うワイシャツなどに是非活用していただきたい。

■なぜそこまで紳装堂は長さにこだわるのか
人間の腕は、日々のビジネスで上にあげたり下げたり、常に激しく動くからだ。
短めの袖では、少し腕を動かしただけでジャケットの奥へと引っ張られ、一瞬でつまって消えてしまう。
目安として、「カフスのボタンを外した際に袖先が手首の少し先、手の甲の上部くらいまで届き、少し長めかなと思うくらい」が、動いたときにも白を覗かせ続けるための計算され尽くしたベストな長さなのだ。
■ 襟の1cm|後ろ姿に漂うリーダーの風格
袖口に完璧な規律を敷いたら、視線を首の後ろへと移す。
Vゾーンの前方ばかりに気を取られ、後ろ襟のチェックを怠るのは詰めが甘い。
結論は、「ジャケットの襟のフチ(上部)から、ワイシャツの襟が1cmほど正しく見えていること」である。
この背中側の1cmの白があるからこそ、首元のラインが美しく立体的に見え、仕立てのいいジャケットと完璧に連動する。
前からも、後ろからも、一切の弛みを許さない徹底的な「線のコントロール」こそが、周囲を圧倒する本物の貫禄を生むのである。
私の提唱する威厳、貫禄に重きを置くスーツスタイルの黄金比率について詳しく解説した記事はコチラから

そしてワイシャツの袖口をダブルカフス(またはコンバーチブルカフス)にする場合、そこにはカフスボタンという名の新たな戦略的武器が加わる。
カフスボタンは時計と並び、男性がスーツスタイルにおいて身に付けることを許された「数少ない貴重な装飾品」である。
だからこそ、おしゃれとフォーマルの「境界線」を忘れてはならない。
TPOを完璧に理解した上で、その場面に応じ全体のバランスを見ながらコーディネートによって取り入れるのが良い選択。
ビジネスシーンであれば派手過ぎないデザインやシルバーを静かに忍ばせ、少し華やかな社交の場であれば自分の色を少しだけ乗せるなど、加飾という性格の物には工夫という名の配慮も必要なことを覚えておこう。
また葬儀などの厳粛なシーンではカフスボタンといった装飾品は一切不要であり、ルールに則った装いを徹底することを忘れずに。
威厳スーツスタイルにおける小物の重要性と選び方について詳しく解説した記事はコチラから
ワイシャツの選択において、自己満足の個性やサイズ選びの「楽(妥協)」を一切排除することだ。
ワイシャツはジャケットの中に着る「下着」という由来を理解した条件のうえで、Vゾーンという名の経営者の顔を支える強力なキャンバスと成り得る。
また伝統やクラシックの正解に身を委ねる引き算の潔さこそが、底知れない品格を醸し出すのだ。
首回りはだらしなさを完全に排す「指一本分のゆとり」を死守し、後ろ襟は風格を漂わせる「ジャケットのフチから1cmの露出」を貫く。
また、ポケットの有無については無い方がクラシックで洗練された印象を相手に与え、前立てについては「威厳がある」という印象を重視する紳装堂の威厳スタイルでは、イギリス式の「前立てあり(表前立て)」をあえて選択することが非常に有効な戦略だと考えている。
そして最後に、私が数々の実戦から導き出した「通常より2cm長めの袖丈」の規律や、ボタンを外した際に手の甲に届くその長さが、腕を激しく動かすビジネスの現場において、常に計算通り「袖口から1.5〜2cmの白」を覗かせ続ける。
このようにワイシャツのディテールにまで隙のない装いを完成させることによって、シビアなビジネスでの戦いで、リーダーの貫禄を誰の手も届かない高みへと押し上げるのである。