「今年のトレンドカラーはこの色だ」「色彩心理学やカラーチャートを学んで、戦略的にVゾーンを組み立てよう」
もしファッション雑誌の言葉を参考にしたり、カラーチャートの暗記に励んでいるのだとしたら、その努力や学びは決してまったく無駄ではなく、自分の格を高める上で大いに為になる。
しかし、そうした知識に加えて、「私たちの最も身近な場所にある自然の景色にも目を向けてみる」という選択肢を、ぜひ取り入れていただきたい。
威厳貫禄に重きを置く装いにおいて、誰かが作った一過性の流行(トレンド)を追うだけでは、時に色合わせに迷いが生じてしまうこともあるからである。
だが、人間が古くから見慣れてきた自然界の色彩に目を向ければ、そこには安心感を与える「絶対的な調和」が最初から用意されているのだ。
知識の習得という努力を土台にしつつ、無料で学べる究極の色彩戦略として自然の調和を装いへ落とし込む。
主観と客観の双方が美しく並び立つ、本物の色選びの規律がここから始まるのだ。
この記事では、自然の景色からブレない配色を抽出し、他人の目に違和感なく好印象を与える「合理的な装い」を完成させるための具体的な規律と、今日から使える風景のストック術のすべてを解説していく。
目次

コーディネートを学ぶ際や色合わせに迷ったとき、色彩の教科書を丸暗記しようとしたり、流行のファッション雑誌や本を読んだりすることが多いだろう。
もちろん、それらが全く無駄だとは言わないし、知識量はものすごく増える。
しかしそこには流行という名の他人の主観が必ず混ざっている。
そういった環境の中でも実は、常に私たちの最も身近なところに「最高の色の組み合わせ」を教えてくれる絶対的な存在がある。
それこそが、「自然」そのものなのだ。
何色と何色を合わせればいいか悩んだときは、部屋に閉じこもって悩むのを辞め、いったん外に出てその季節の自然(外の景色)を一目見れば、そこに文字通り十分すぎるほどの答えが出ているのだ。
これはプライベートの私服においても、ビジネスにおけるスーツスタイルにおいても全く同じことである。
なぜなら、自然界の配色とは人間の長い歴史の中で「普段から見慣れている景色」そのものだからだ。
人間が本能的に調和している色彩をそのまま装いに拝借する。
だからこそ、その自然を取り入れた色合わせは対峙した人の目にも違和感なく、すんなりと好印象で受け入れられるのだ。
小手先のテクニックで奇をてらった人工的な組み合わせを組み立てるよりも、自然の調和をそのまま自らの装いへと落とし込む方が、合理的であり結果を出してくれるだろう。

具体的に、目の前の自然からどのように色を抽出し、自らの装いへと落とし込んでいくべきか。
その手順を四季の情景に例えて解説する。
自然が織りなす四季折々の色彩は、そのまま装いの色の組み合わせやコーディネートを決定づける手本となる。
■春
どこまでも澄んだ青空の青に、浮かび上がる白い雲の白。
そして、優しく咲き誇る桜の淡いピンクと、それを支える木々や土壌の茶色。
茶系の革靴にネイビーのスーツを合わせ、シャツには清潔感のある白や淡いピンクのものを取り入れる。
そこに、桜を連想させる淡いピンクのネクタイやチーフを重ねれば、これだけで春の街並みに不自然さなく溶け込む調和が完成するだろう。
■梅雨
雨の雫に濡れながら、しっとりと色づく紫陽花の濃い青や神秘的な紫色。
ネイビースーツのグラデーションに、差し色としてラベンダーやパープル系のネクタイやチーフ、あるいはソックスを忍ばせる。
ジメジメとした季節に、見る者へ静かで知的な清涼感を与える色合わせとなる。
■夏
ギラギラとした太陽に照らされる、鮮やかな青空や生命力に満ちた海の青。
濁りのない、はっきりとした鮮やかな少々明るめのネイビー(ブルー系)を主役に据える。
そこに白や淡いブルーのシャツを合わせ、黄色系統のネクタイやチーフなどのコントラストを効かせた配色を取り入れることにより、夏の光の中でも美しく映える。
■秋
山々を美しく染め上げる、紅葉の茶系や赤系統のグラデーション。
大人の貫禄が際立つ季節だ。
グレースーツをベースに、小物でブラウン、カーキ、ボルドー(ワインレッド)といった、紅葉の深みをそのまま模した色を重ねていく。
温かみと重厚感を演出し、ビジネスにおける落ち着きを無言で証明する。
■冬
しんしんと世界を包み込む雪の白。
そして、冬枯れの木々や、どこか静けさを感じさせるこもったダークトーン。
チャコールグレーやブラックといった、静けさを感じさせるこもった深い色をベースに、マフラーやシャツなどで雪のような混じり気のない「白」を際立たせるように取り入れる。
といった具合だが、これらはただの参考例である。
私たちが日々生活する中で、道端に咲いている野草や草花、山に自生している植物など完全に無料で受け取ることができる色彩の勉強法が自然の中にはたくさん落ちているのだ。

季節別のスーツの選び方について詳しく解説した記事はコチラから。

また、自然界からの学びは地上の植物や空の色だけに留まらない。
目をさらに下へと向ければ、地球そのものが創り出した究極のデザインが存在する。
それは石などの自然が作り出した造形物である。
私は「石」という存在がとても好きだ。
以前、ネット通販サイトを運営していた際(結果としては失敗してしまったが)、そのとき扱っていた商品も石だったほど、私はこの存在に深い愛着を抱いている。
■石が教えてくれる有機的なバランス
なぜ、石がファッションの参考になるのか。
地球が何万年、何億年という途方もない時間をかけて作り出した石の模様や柄、独特の色合わせには、人工的には絶対に作れない有機的なバランスが宿っているからだ。
例えば、一見すると不規則に混ざり合っているように見える大理石のマーブル模様や、鉱物の積層。
それらは、グレー、ベージュ、白、あるいは黒といった異なる色が絶妙な比率で調和している。
この「自然界の比率」をそのままネクタイの柄や、スーツスタイルの比率に応用するのだ。
■色と素材を完全に同調させる
そして、色彩を自然から学ぶのであれば、身に纏う「素材」もまた、自然界のものでなければ整合性が取りにくい。
色だけでなく、ウール(羊毛)、リネン(麻)、コットン(綿)、シルク(絹)、そしてレザー(革)といった「自然素材」を使うことが極めて重要である。
どれほど色合わせが自然な組み合わせを組めたとしても素材が化学繊維(ポリエステル等)のテカテカとした質感であっては、自然界の調和は崩れかねないのだ。
環境が許し、可能であれば素材も自然素材のものを取り入れるようにしよう。
色と素材が自然の中で同調し、五感レベルで調和するからこそ、コーディネートの完成度はより一層高くなり、他者を圧倒する深い風格へと昇華するのである。

ここで皆さんへ、今日から日常で即座に実践できる具体的なアドバイスを送る。
日常のビジネスやプライベートの移動の最中、ふと「綺麗だ」と心が動いた自然の風景や華やかな自然の色彩、あるいは美しい石の模様に出会ったときは、ぜひスマホの写真に収めて自分専用のファイルとしてストックしておいていただきたい。
そして「何色を合わせればいいか」などコーディネートに困ったときに、その写真のストックを見返してほしい。
そこには、人間が作ったトレンド(流行)を遥かに超越した、美しい色の組み合わせが必ず眠っているはずだ。
最高の色彩の手本は、常に私たちの最も身近な自然の中にある。
色合わせやコーディネートに困ったときには、雑誌の知識を覚える前に、まず外の景色を眺めてほしい。
なぜなら、人間が古くから見慣れた自然の配色こそが、他人に最も違和感なく好印象を与えるからだ。
例えば、春の桜の淡いピンクと大地の茶色、秋の紅葉が織りなす重厚なグラデーションなど季節の移り変わりのなかには、すでに正解の組み合わせが隠されているからである。
また、地球が途方もない時間をかけて創り出した石などの独自の柄や独特の色合わせも、ファッションの組み合わせにおける極めて参考になる教科書となってくれるだろう。
そして、それらの色彩にウールやレザー(革)といった「自然素材」を組み合わせることによって、色と質感が自然界と同じように同調し、コーディネートの完成度はより一層引き上がるのだ。
だからこそ、日常のなかで美しい風景に出会ったときは、ぜひ写真に収めてストックしておいていただきたい。 コーディネートに迷ったとき自分が撮り溜めた自然の写真を見返せば、そこには人間が作った流行を超越した確実な答え(ルート)が必ず眠っているはずだ